そして円熟期を迎えた64歳のときヴァイオリン・ソナタ(Violin Sonata in A major/sonate pour violon et piano,1886)を発表します。この曲は、同郷の後輩で、当時有名なヴァイオリニストであったウジェーヌ・イザーイ(1858〜1931)の結婚を祝うためのプレゼントとして作られた曲です。「ささやかな手書き譜ひと束、わたしはここに心のすべてをこめました。」この言葉が添えられました。このソナタは19世紀後半のヴァイオリンソナタの最高峰の一つとされ、作曲家としての名声を一気に高めました。評価されていなかった若かりしころの作品までもが高い評価を得るようになりました。
さて、組曲「展覧会の絵 (Pictures at an Exhibition [Bilder einerAusstellung])」(1874)は、若くして亡くなった友人の建築家兼画家ハルトマンの遺作展に触発されて作曲された作品です。遺作展では400もの絵画が並びました。このうちムソグルスキーが強く印象に残った10枚の絵画を描いた10曲と、『プロムナード』5曲、『死者とともに死者の言葉で』の16曲からなります。印象を音楽に仕立て上げられており、その間にプロムナードという前奏曲あるいは間奏曲が挿入されているのが大きな特徴となっています。このプロムナードはムソルグスキー自身の歩く姿を現しているといわれています。亡き友を偲びつつ作品を鑑賞する姿が思い浮かびます。
プロムナード Promenade 1 小人(グノーム) Gnomus プロムナード [Promenade] 2 古城 Il vecchio castello プロムナード [Promenade] 3 テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか Tuileries - Disputed'enfants apres jeux 4 ビドロ Bydlo プロムナード [Promenade] 5 卵の殻をつけた雛の踊り Ballet des poussins dans leurs coques 6 サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ Samuel Goldenburg und Schmuyle プロムナード Promenade 7 リモージュの市場 Limoges - Le marche 8 カタコンブ - ローマ時代の墓 Catacombae - Sepulchrum Romanum 死者とともに死者の言葉で Cum mortuis in lingua mortua 9 鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ La cabane sur des pattes de poule -Baba-Yaga 10 キエフの大門 La grande porte de Kiev
シベリウス作のピアノ曲、「樹の組曲(5つの小品)」op.75その名のとおり、樹をモチーフにして短い曲を5つ組み合わせています。標題はそれぞれ「ピヒラヤの花咲く時」「孤独な松の木」「はこやなぎ」「白樺」「樅の木」それでは,「樹の組曲(5つの小品)」よりこのうち、よく耳にする「樅の木」op.75-5 (Granen, The Spruce op.75-5)をそうぞ。